協会コラム ~だから、Medicell~
Vol.41 知る人ぞ知る梨状筋
骨格筋は思うより複雑な構造をしています。表在筋と深層筋があって、あわせてその数400とも600ともいわれます。普段私たちが耳にしたり口にしたりする骨格筋の名前は、その極一部ですね。

そんな中でも、近年その存在がクローズアップされているのが梨状筋です。梨状筋は骨盤の深層に位置する小さな筋肉ですが、非常に重要な役割を果たしています。
梨状筋の正確な位置は、起始部が仙骨の前面(第2〜第4仙椎の前面)で停止部が大腿骨の大転子の上縁です。そして、梨状筋の働きを起こしている神経は仙骨神経叢の枝。梨状筋は坐骨神経と密接に関係し、坐骨神経の上を走るか、まれに貫通することもあるということです。
仙骨と関連性の深い筋肉ですね。坐骨神経にも影響を及ぼす筋肉でもあります。

ところで、腰痛が発生するメカニズムには、これまた想像するよりもはるかに多くのパターンがあるといわれます。
腰痛の発生に梨状筋が関わるということが、知られるようになっています。
梨状筋の機能としては、
1. 股関節の外旋
股関節を伸展位にしたとき、大腿骨を外旋(外にひねる)させる。
他の深層外旋六筋(内閉鎖筋、外閉鎖筋、上双子筋、下双子筋、大腿方形筋)と連携。
2. 股関節の外転
股関節を屈曲した状態では、大腿骨を外転させる作用もある。
これは歩行時に骨盤の安定を助け、立位時のバランス保持に寄与する。
3. 骨盤の安定化
骨盤と大腿骨をつなぐことで、骨盤を安定させる役割を果たす。
特に立位・歩行・ランニングなど動的な姿勢保持で重要。
などとされていて、つまり姿勢を保ったり、歩くときに常に重要な働きを行っているということですね。
梨状筋が関わって、何らかの症状が発生するメカニズムでは、梨状筋が過緊張または肥大し、坐骨神経を圧迫して、坐骨神経痛と似た症状(下肢のしびれ、疼痛、放散痛)が出るケースがあるとされます。
そのきっかけは、長時間の座位、過度な運動、股関節の柔軟性不足など。
特に、長時間の座位によって起きるケースは、とても多いのでは。

そうなるとその対処方法としては、ストレッチ,マッサージ,物理療法(超音波など),筋膜リリース,場合によっては神経ブロック注射、ということになるわけです。
筆者:竹内 研(一般社団法人日本メディセル療法協会理事・学術委員長)