協会コラム ~だから、Medicell~
Vol.42 ふくらはぎに注目
腓腹筋(ひふくきん)とヒラメ筋は、いずれも下腿(ふくらはぎ)に位置し、下腿三頭筋を構成しています。両者は共に足関節の底屈(つま先を下げる動き)に関与しますが、起始部・解剖構造・機能・使われる場面・筋線維のタイプなどにおいて明確な違いがあります。

その特徴は以下の通りです。
特徴項目 | 腓腹筋 | ヒラメ筋 |
起始部 | 大腿骨(大腿骨内側・外側顆) | 脛骨・腓骨(腓骨頭と脛骨後面) |
停止部 | アキレス腱を介して踵骨に付着 | アキレス腱を介して踵骨に付着 |
関節またぎ数 | 2関節筋(膝関節と足関節) | 1関節筋(足関節のみ) |
主な作用 | 足関節の底屈+膝関節の屈曲 | 足関節の底屈 |
筋線維タイプ | 速筋(Type II)優位 | 遅筋(Type I)優位 |
動作特性 | 瞬発的・パワー系の動作に関与 | 持久的・姿勢保持に関与 |
日常生活での役割 | ジャンプ、ダッシュなど瞬間的動作 | 立位・歩行・姿勢保持などの持続的動作 |
筋腹の形状 | 目立つ二頭型の筋腹 | 幅広く扁平で深層に位置 |
位置関係 | 表層 | 深層(腓腹筋の下層) |
腓腹筋は、表層にあるため、ふくらはぎの外観上の形状を形作ります。速筋線維が多く、爆発的な収縮力を発揮します。膝関節をまたぐため、膝が伸展している時に最も強く働き、ジャンプ,坂道ダッシュ,つま先立ち動作などで主動筋となります。

ヒラメ筋は、腓腹筋の深層にある扁平な筋肉で、遅筋線維が多く、疲労耐性が高いのが特徴。疲れにくい筋肉です。膝関節をまたがないため、膝の角度に関係なく働いて、長時間の立位保持や歩行,安定性維持に重要な働きをします。“第二の心臓”とも呼ばれるポンプ機能に関与し、静脈還流を助けるという大きな機能を持っています。

腓腹筋は、膝を伸ばした状態でのカーフレイズ(立位など)で、ヒラメ筋は、膝を曲げた状態でのカーフレイズ(座位など)で刺激されます。腓腹筋が衰弱すると、ジャンプや走力が低下。ヒラメ筋が衰弱すると、長時間の立位が困難になったり、バランス機能の不良が起きます。
両者はともにアキレス腱に連結し、共同して足関節底屈を行いますが、運動条件や負荷によって主導する筋が異なります。短距離走やジャンプでは腓腹筋が主動筋となり、長距離歩行や姿勢保持では、ヒラメ筋が主動筋となります。
こうしてみると、日常生活においては、ヒラメ筋が果たす役割が大きいですね。立ったり座ったり、歩いたり、姿勢を保ったり、そして第二の心臓として、血液循環に関わったり。

ヒラメ筋は深層筋で、腓腹筋の下に在りますので、表面からのアプローチでヒラメ筋を緩解するのが難しかったりします。そこで、筋膜の連動性を活かしたアプローチが、コンディショニングの一助になるとされています。

筆者:竹内 研(一般社団法人日本メディセル療法協会理事・学術委員長)