協会コラム ~だから、Medicell~
Vol.48 沈黙の股関節
股関節の存在は、一般の方々を含めて、よく知られていると思います。高齢化に伴って、股関節のトラブルに悩む人たちが多くなっているように思いますね。統計によると変形性股関節症の方は約500万人いるとか。そして、長年の生活の中で、股関節の存在を意識したり感じたりすることは、とても少ないですね。肩や腰はしばしばコリを感じたり、痛みが起きたりしますし、膝は生活の中で動きを感じることは多いです。

股関節は大殿筋や大腿四頭筋や大腿二頭筋などの大きく分厚い筋肉に覆われていて、日常生活で自覚することはほとんどありません。
肋骨とかは、皮膚の上から触れたり鏡に映して見ることもありますが、股関節は見ることも触れることもできないばかりか、どこにあるかその位置はまったく自覚できない人がほとんど。
まさに沈黙の関節。

しかし、立位でも座位でも、常時荷重がかかっています。歩行時では文字通り、下肢全体の動きの中心です。歩行でもそうですが、走ったりジャンプしたり階段を昇り降りする時は、遊脚(宙に浮いた脚)が着地する瞬間にかなり大きな着地の衝撃がかかります。さらに、歩行でも走りでも、片脚で体を支えて前進するなど移動が行われます。ここでも股関節に相当の負荷がかかります。
股関節は肩関節と並んで、動きのパターンが多い関節です。これを関節の自由度が大きいといいます。ということは、様々な方向から負荷がかかるということです。
残念ながら、股関節の存在を意識しだすのは、股関節に何がしか違和感や問題を感じだした時から。

股関節の調子が悪くなると、移動運動が不自由になります。加えて、股関節は下肢と骨盤を繋いでいるので、骨盤に連結している脊柱の位置や形にほぼ直接的に影響します。
ということは、身体全体の構造に、股関節は関わっているということです。
股関節は臼状関節つまり臼の窪みに大腿骨の頭(骨頭部)がはまり込んでいます。ですから、大腿骨の骨頭がズレやすいといえます。

股関節のトラブルを防ぐには、臥位つまり横になっている時以外には、股関節に様々な負荷がかかり続けているという知識を持っておくことが必要ですね。
股関節の違和感や不調を感じてから、これを何とかしようと股関節の周囲に施術を行ったり、股関節のエクササイズを行うのは、ある程度の解決策になる可能性はあります。
しかし、常に股関節にかかってくる負荷に配慮しないと、いわゆる「もどり」が起きるケースが多くなるでしょう。
体は各パーツが繋がった連続体なので、股関節にかかる負荷を適正にするには、体の広い範囲に目を向ける必要がありますね。
もちろん、背骨はその中心です。
筆者:竹内 研(一般社団法人日本メディセル療法協会理事・学術委員長)